嫁、ガンバレ
好奇心は子供に多く、大人に少ない。稀にいつまでも子供のまま大人になった者がいて、それが釣り人。幼児性と好奇心は釣り人の特質である。
とはいえ、当然大人の生活も求められる。釣り場では子供、社会では大人、この変身が難しい。
職場仲間に釣り好きのことがバレてしまい、変身しにくくなった。せっかく大人の顔で仕事をしていても、釣りに話を向けられると、途端に目元がゆるんでしまう。
私は急に生き生きするようである。多少饒舌になるのは承知だ。だからその分自制してもいるが化けの皮が剥がれていったん出てしまったシッポは隠すべくもない。困ったこまった。「ヨッ！釣れてますか？」などと声かけられるともうだめ。スイッチ・オンで、脳裏にパッと海の景色が浮かびデジタル映写が始まってしまう。
先日、わが家の法要の際、お寺さんが仏壇の前に座るやいなや「釣れてますか」と言った。「はい、せいだい殺生しております」と返事したが、お寺さんは動ずることなくお経を唱えた。よくできた坊さんだ。彼・坊さんは、ヨットが趣味だと聞いている。日焼けしたお顔であった。
釣りの話とはいいじょう、話題は魚料理に関することが多い。みなさん、とれとれの魚の味に、強い興味をお持ちのようだ。味覚の秋である。
もぎたて果物や、刈たての新米。
柿、イチヂク、ビワ、は木の真下で食うにかぎる。
刈り入れ前の稲の穂から米粒を盗み取り、手でもいで脱穀し、そっと口に含むとこれが最高に美味。野と海の幸、いずれもとれとれが最高だ。
秋ナス、秋サバ、今が旬。
嫁、ガンバレ！